《健康を考える上で知っておきたい三大栄養素とその役割》
私たちの体を構成する材料となる栄養素に、以下のような三大栄養素というものがあります。
タンパク質 脂質 糖質(炭水化物)
これらの栄養素にはそれぞれ役割があり、これは全ての人間の体において共通しています。
そしてもし、このどれかがその本来の役割を果たせないような体の状態になった時には、
それ以外の栄養素がカバーする、といった補正作用と呼ばれるシステムが体には存在しています。
それではそれぞれの栄養素の本来の役割とはどういったものがあるのか見てみましょう。
タンパク質の本来の役割
タンパク質はトリプシンという酵素によってアミノ酸に代謝され、そのアミノ酸を使って各細胞を作り、
コラーゲンやエラスチンといった体内での中心部にある骨や体を守る皮膚、また筋肉組織などにも使われています。
体内の酵素や神経伝達物質など大切な役割もタンパク質からで、血中のヘモグロビンやホルモンの一部もタンパク質由来です。
脂質の本来の役割
脂質はリパーゼという酵素によって脂肪酸へと代謝されます。
脂肪酸には様々な種類がありますが、体内に入ってきた油のほとんどが中性脂肪となり、
一部がコレステロールとなってステロイドホルモン(生命を維持するホルモンと繁殖を司るホルモン)を作っています。
また、それ以外にも体内の炎症を促進したり鎮静させたりと、体にとってとても重要な役割も果たしています。
糖質の本来の役割
糖質の最大の役割が、体内の生理機能を動かすためのエネルギー源です。
日中に活動したり、体を動かして運動したり、呼吸や循環などの基礎代謝を回したり、
ウイルスや細菌と戦ったり、体内のゴミを代謝して排出したり、私たちは日々たくさんのエネルギーを使っています。
そのエネルギー源となるのが糖質で、その中でもグルコース(ブドウ糖)や
フルクトース(果糖)といった単糖類が即座にエネルギーとして使われます。
また、私たちが日々考えたり様々な情報を処理している脳や、血中の赤血球は糖のみをエネルギー源としています。
砂糖が体に良いわけとは
上記の三大栄養素が本来の役割を果たしながら生理機能を回すことが健康な体を維持するための大切な要素なのです。
エネルギー切れになるということは血中の糖が切れてきた証拠であり、それは体が危機的状態であるということです。
そして脂肪酸やタンパク質を溶かし出してでもそれを糖に変えてエネルギーを確保しようとします。
本来の代謝経路でエネルギーを獲得するためにはタンパク質や脂質をエネルギー源にするのではなく、
糖質から得る純粋な糖を積極的に摂り、その糖をエネルギーに変えるシステムを体内に維持させることです。
健康な細胞は、純粋な糖を好みます。糖がエネルギーに変わるには、食べて、動く、
それによってエネルギーは作られ、その総量は運動量に比例して増えていきます。
正しく食べ、正しく動くことが糖のエネルギー代謝においてとても重要になるのです。
《不飽和脂肪酸より飽和脂肪酸が良いわけとは》
代謝された脂質は全て脂肪酸となりますが、脂肪酸の中には不飽和脂肪酸と飽和脂肪酸が存在します。
不飽和脂肪酸には一価不飽和脂肪酸と多価不飽和脂肪酸に分かれ、更に、オメガ3・6・9といった言い方をしています。
これらの違いは、脂肪酸が飽和しているのか飽和していないのか、
飽和していないのならば何箇所が飽和していないのか、ということになります。
二重結合
飽和脂肪酸は、全ての炭素に対して水素がくっついて飽和している状態の油で、冷やせば固まり熱で溶けるのが特徴です。
一方不飽和脂肪酸は、いくつかの炭素に水素がくっついていない箇所があり、固まらないのが特徴です。
炭素に水素がくっついていない場所によってオメガ3・6・9という数字が名付けられています。
水素がくっついていない炭素は、本来なら水素と繋ぐはずの手が水素がないために余っており、余った手は隣の炭素とくっついた状態になっています。
これを二重結合と言います。
酸化
ここに体内にある活性酸素が近寄ってくると炭素は二本のうちの一本の手を簡単に離して近づいてきた活性酸素とくっつきます。
これを酸化と言います。
酸化した油は過酸化脂質(アルデヒド)と呼ばれるものに変化して、タンパク質(正常な細胞など)と結合して体を傷つけたり、体内のあらゆる酵素をブロックしてしまったり、過酸化脂質そのものが体内のゴミとして炎症の原因となってしまいます。
よって、酸化しにくい油を摂取することが体に負担がないことだとわかります。
PUFA
PUFA(多価不飽和脂肪酸: PolyUnsaturated Fatty Acid)
不飽和脂肪酸は光と熱に弱く高温ですぐに酸化してしまいます。酸化した油が体内に入ってくるとそれだけで炎症の原因となり、慢性疾患などの病気を引き起こす原因となり得るのです。
現代人が多く摂る油は、オメガ3(亜麻仁オイルやフィッシュオイル)や6(キャノーラ油や菜種油などの植物油脂)といったPUFAが中心となっており、本来なら飽和脂肪酸でできるはずの中性脂肪が不飽和脂肪酸でストックされているのが現代人の特徴です。
ストレスや体内の炎症によるエネルギーの消耗により血中の糖がなくなるとエネルギー源としてPUFAを血中に遊離させてしまいます。
血中にある活性酸素は即座にPUFAと結合し、アルデヒドを作ってしまうことになるのです。
同化
タンパク質は体内に入るとエネルギーを使って小さく小さく代謝され、最終的にはアミノ酸に分解されていきます。
小さいアミノ酸はさらに様々な配列を作って体の材料として使える形に変化して体内の様々な組織に配置されていきます。
これをタンパク質の「同化」と言います。さらに古くなった組織は活性酸素などで壊して外に排出されるようになっています。
アミノ酸からできるコラーゲンやエラスチン、酵素や神経伝達物質などのアミノ酸由来の生理物質は新しいものに日々置き換えられ、
古くなったものは排除されながら体の健康状態を維持しています。
これを新陳代謝と言います。
異化
心にストレスを抱えた時や体に疾患などを抱えた時など、
体が危機を感じた時にはものすごい勢いでエネルギーの消費が始まり、血中の糖は無くなっていきます。
この時、十分に体内に糖がなければ即座に脂肪分解やアミノ酸分解が起こります。
脂肪にはストックがありますが、タンパク質は最低限で体全部を回すため、
これによって体内の何かしらに使われていたアミノ酸が溶け出していき、
エネルギー源として使用されることになります。これをタンパク質の「異化」と言います。
健康な体を作るには
そして、「異化」が起こる時にはタンパク質にくっついていた窒素が放たれるため体内の窒素量が増えてしまいます。
体内をより健康に、より若々しく保つためにはこのタンパク質の「同化」と「異化」のバランスがとても重要になってきます。
タンパク質を壊してしまう不必要な「異化」をあまり起こさずに「同化」をたくさん起こして体内を健康に保つには、
同化しやすいアミノ酸を摂ることが重要となってきます。
体内のアミノ酸が足りなければ即座に「異化」が始まるわけなので、
アミノ酸の吸収率の悪い植物性のタンパク質(小麦に含まれるグルテンや大豆に含まれるサポニン等)の摂取を控え、
動物性のタンパク質(良質な卵や肉等)を摂取することがより健康な体を作るには重要になってくると言えるでしょう。